排水溝に捨てる訳にもいかず、新聞紙などに吸わせるのも手間がかかる使い古しの油。
そんな時に、活躍するのが固めるテンプルですね。普段何気なく使っている固めるテンプルですが、なぜ油が固まるのか不思議です。
今回は、そんな固めるテンプルの原理や成分を中心にご紹介していきます。
目次
固めるテンプルの成分
固めるテンプルは、ジョンソン社が出している油凝固剤の商品名です。
現在、他メーカーからも同様の油凝固剤が販売されていますがどれもその成分はヒドロキシステアリン酸と表示されています。
ヒドロキシステアリン酸とは、植物油脂の脂肪酸で固めるテンプルの場合は唐ゴマから抽出したヒマシ油を原料としています。
ちなみに、唐ゴマにはリシンという猛毒が含まれている事が有名です。リシンの毒性はサリンの数千倍強力というのですから心配になります。
唐ゴマから抽出したヒマシ油を原料にした固めるテンプルの安全性はどうなのでしょうか。
固めるテンプルの安全性
販売元であるジョンソン社の公式HPによれば、リシンは唐ゴマの種子(の皮)に付いている成分であり、ヒマシ油を生成する過程で皮は除去される為心配が無いそうです。
万が一、ヒマシ油に少量のリシンが混ざり込んでもリシンは熱に弱い為ヒマシ油精製時の加熱処理で完全に無くなります。
固めるテンプルは唐ゴマ由来のヒマシ油を原料として作られ、毒性の心配も無いという事が判りましたね。
固めるテンプルが固まる原理
固めるテンプルはヒドロキシステアリン酸を主成分として作られている事は判りましたが、何故ヒドロキシステアリン酸を油に混ぜると固まるのでしょうか?
固めるテンプルが固まる原理について解説していきます。
専門的な知識や用語で解説すると、分子間水素結合や分子構造の多孔質などが関連してくるのですが、小難しい話は抜きにして簡単に説明します。
まず、固めるテンプルでは固体です。つまり、常温だと固体になる油と考えて下さい。(加工法によって常温で液体にもなる)
これを、高温(80℃以上)の油に混ぜ込むと固めるテンプルは油に溶けます。
ヒドロキシステアリン酸は分子がスカスカで穴だらけなので、油がこの穴に入り込みます。油を抱えたような状態でヒドロキシステアリン酸が冷やされていくと、油を巻き込んだ形で元の固体へと戻ろうとします。結果、完全な固体へとは戻らずにゲル状となるのです。
これが、固めるテンプルが油を固めてしまう原理です。
※ネット上では鹸化などを引き合いに出している説明を見かけますが、原理は全く違うので混同しないようにしましょうね。
ちなみに油が固まる(固体となる)原理には
・冷やす
・鹸化
というものがあります。
冷やす、はまさにそのままで物質には融点(解ける温度)と凝固点(固まる温度)があるので油も凝固点が低いものであれば比較的簡単に固まります。牛脂やラードが解り易いですね。
鹸化は、塩基反応の一種で油に苛性ソーダを混ぜる事で石鹸を作る原理の事です。固めるテンプルが固まる原理は、冷やすに似ていますが若干異なった方法です。言うならば、冷えて固まる物質を油に混ぜて冷える過程で油を巻き込む原理です。
固めるテンプルが固まる時間
固めるテンプルが固まる時間はどれくらいかかるのでしょうか?
商品説明にもありますが、おおよそ1時間程度で固まります。
後述しますが、固めるテンプルが溶ける為には80℃以上の温度が必要です。
固めるテンプルに記載されている1時間という目安は、この80℃~100℃程度に熱せられた油に投入してから固まるまでの時間となっているので、天ぷらなどを揚げてからすぐの油に投入した場合は、固まるまでの時間がもう少しかかるかもしれませんね。
固まる時間=油が自然に冷めるまでの時間となりますので、投入時の油がどれくらいの温度かによって多少固まるまでの時間が前後するという事です。
時間が経っても固まらない?考えられる原因は?
固めるテンプルを使ったのに、油が固まらない場合はどのような事が考えられえるのでしょうか。
①時間が充分に経過していない
ジョンソン社によれば、固めるテンプルを加えた油は40℃を下回ったあたりから凝固が始まります。
そのため、室温や季節によって油の温度が下がるまでに要する時間は変動する事があり40℃を下回っていない事で固まっていない可能性があります。
充分な時間経過に達していない可能性が考えられる場合は、もう少し様子を見てみましょう。
②油全体にしっかり混ざっていない
固めるテンプルは、油よりも比重が大きい物質です。そのため、しっかりとかき混ぜていないと均等に分散されずに固まらない事があります。
また、投入時の温度が低すぎて溶けていない可能性も考えられます。
固めるテンプルは80℃以上の温度で溶け、40℃以下で固まり出すという特徴がありますので混ぜるときの温度が低すぎると、油に混ざらずに固まらない事があります。
③適正な使用量に達していない
原理でも説明したように、固めるテンプルが固まる原理は分子に油を巻き込んで一緒に冷やし固めるというものです。
いくら、分子の穴があっても穴が塞がりきってしまっては巻き込めなかった油は固まりません。固めるテンプルは1包あたり600mlの油が限界量です。適正量を使いましょう。
固めるテンプルで油以外も固まるのか?
固めるテンプルで油以外を固められるのかどうかについてですが、基本的に油を固めます。
言い換えれば、天ぷら油に限らず「油」であれば種類を問わず固める性質は持っている事となります。
サラダ油、オリーブ油、紅花油、ごま油など油であれば固まりますが、油以外を固める為に使用してもあまり効果は期待できないでしょう。
エンジンオイルを固めるなどの使用法が紹介されている場合がありますが、固めるテンプルを使用する際には80℃以上に熱さなければならない点を考えれば、天ぷら油の処理という使用法以外で何かを固めようとするのは避ける方が無難でしょう。
冷えた油を固めるなら別方法を検討しましょう
天ぷらを揚げた直後など、捨てようと考えている油が80℃以上の時は固めるテンプルは有効ですが、冷めてしまった油を固めるテンプルで処理しようとした場合は油を温めなおして80℃以上にする必要があります。
捨てる為に、わざわざ火にかけるのは考え物ですよね。そこで最後に冷えてしまった油を処理する方法をいくつか紹介します。
①吸わせるテンプル
固めるテンプルの類似品として吸わせるテンプルという商品があります。
その名の通り、冷えた油でも吸い込ませて捨てる事が出来るので冷えた油の処理には適した商品と言えますね。
②小麦粉や片栗粉を混ぜて捨てる
冷えた油を処理するのであれば、小麦粉や片栗粉を混ぜてしまいましょう。
粉を入れてゆっくりとかき混ぜると油が徐々に固まっていきます。ある程度混ぜたら、ゴミ袋などに入れて燃えるごみとして捨てましょう。
この方法を試す時は、絶対に熱い油に入れないようにしましょう。大変危険ですのであくまでも冷えた油の処理方法として試してくださいね。
③牛乳パックに布をつめて注ぐ
牛乳パックにぼろ布などを入れて、そこに冷えた油を注いで捨てる方法もあります。
新聞紙などでも代用できますが、吸える油が少ないので布などを入れた方がより多くの油が処理できます。
油を入れたら、こぼれないように口をしっかりと塞いで燃えるごみに出しましょう。
まとめ
・固めるテンプルの主成分はヒドロキシステアリン酸。
・固まる原理は、油を巻き込んで冷え固まるから。
・固まる時間は油の温度によって変わるがおおよそ1時間。
・固まらない場合は経過時間、温度、使用量を確認。
・油以外の使用はおすすめできない。
・冷えた油は別の方法を検討するとよい。
固めるテンプルについて解説しました。
油を排水溝に直接捨ててしまうと、悪臭を引き起こしたり環境汚染に繋がってしまうので固めるテンプルなどを上手に利用してしっかりと処理しましょうね。